<日本の伝統工芸>

◆織り

・西陣織 (京都)

西陣織(にしじんおり)とは、京都の先染め織物をまとめた呼び名である。
西陣とは、応仁の乱時に西軍(山名宗全側)が本陣を置いたことにちなむ京都の地名。 行政区域は特別にはないが、この織物に携る業者がいる地区は、京都市街の北西部、おおよそ、上京区、北区の、南は今出川通、北は北大路通、東は堀川通、西は千本通に囲まれたあたりに多い。応仁の乱を期に大きく発展したが、応仁の乱より昔の、5世紀末からこの伝統が伝えられている。 また、「西陣」と「西陣織」は「西陣織工業組合」の登録商標。

・博多織 (福岡)

博多織(はかたおり)とは、福岡県福岡市の主に博多地区で特産とされる絹織物。日本三大織物の一つ。最近は福岡市周辺に産地が分散しつつある。江戸時代、福岡藩黒田氏から徳川将軍家に献上された事から、特に最上の物を献上博多などとも呼ばれる。経済産業大臣指定伝統的工芸品に指定されている。


・佐賀錦(佐賀)

肥前国鹿島藩(現在の佐賀県鹿島市周辺)の御殿女中に受け継がれた織物。箔糸(金銀箔を漆で和紙に貼り、細く切ったもの)を経糸とし、絹糸を緯糸にするのが特徴である。鹿島錦とも。織機ではなく、織り台という縦46センチ・横32センチ程度(帯用の一回り大きなものもある)の小さな台に経紙と呼ばれる経糸を掛け、「網針(あばり)」という杼を簡略化したような針と竹べらで絹糸を織りこんでいく。網代型や卍繋ぎ、菱型などの幾何学模様を綾織りと平織りで端正に織り出し、気品のある華やかさと和紙を使った独特の風合をもつ。

◆染め

・京友禅 (京都)

京友禅(きょうゆうぜん)とは、京都の伝統工芸品の1つで、元禄時代に扇絵師の宮崎友禅斎によって考案された染色。絹織物の白布に絵をかき、染め出したもので、鴨川の流れでさらし、鮮やかな色彩を出していたが、最近は郊外に移転している。
また単に「友禅染」とも呼ばれる。


・加賀友禅 (石川)

加賀友禅(かがゆうぜん)は、国指定伝統的工芸品で、江戸時代中期に加賀藩にて栄えた加賀御国染を基に京友禅の創始者といわれる絵師宮崎友禅斎が、晩年金沢の加賀藩御用紺屋棟取であった太郎田屋に身を寄せ、加賀御国染に大胆な意匠を持ち込み、確立した染色技法と、その作品をいう。加賀五彩(藍、臙脂、草、黄土、古代紫)と呼ばれる艶麗な色彩で知られ、特に紅色、紫、緑系統の色を多用する。
柄は、図案調の京友禅に対して草、花、鳥等の絵画調の物が多く、自然描写を重んじる中から「虫喰い」等独自の装飾が生まれた。「ぼかし」も京友禅以上に多用される傾向にある。金沢市内を流れる浅野川では、工程の最後の方に、余分な糊や染料を洗い流す友禅流しが見られることがある。

・琉球紅型(沖縄)

琉球染物、沖縄を代表する伝統的な染色技法の一つ。14世紀の紅型の裂が現存しており、技術確立の時間を考慮すると、その起源は13世紀頃と推定されている。「紅」は色全般を指し、「型」は様々な模様を指していると言われる。沖縄県は「びんがた」と平仮名表記する場合が多い。古文書に現れる文字は「形付」、「形附」で「紅型」表記はない。高年者や下級士族向けの藍色の濃淡で染めるものは藍方(えーがた)と呼ぶ。

・有松(鳴海)絞(愛知)

愛知県名古屋市緑区の有松・鳴海地域を中心に生産される絞り染めの名称。江戸時代以降日本国内における絞り製品の大半を生産しており、国の伝統工芸品にも指定されている。「有松絞り」、「鳴海絞り」と個別に呼ばれる場合もある。木綿布を藍で染めたものが代表的で、模様については他の生産地に類を見ない多数の技法を有する。

・茜染(岩手)

茜染は別名を紫根染といい、岩手県が発祥で、江戸時代にこの地を納めていた南部家がこの染色方法を推奨したことに由来して、南部絞と呼ばれるようになりました。日本全国に岩手県の特産品として広まったのは江戸時代ですが、染色方法としては飛鳥時代や奈良時代といった大昔から使われています。

・阿波正藍(徳島)

徳島県の藍染は、江戸時代になって阿波の藩主、蜂須賀至鎮の奨励によってこの地で隆盛を極めました。この地の藍はその品質のよさから『正藍』ほかの地の藍は『地藍』と呼んで区別され、全国各地で珍重されてきました。藍染めの方法には、生葉で染める「生葉染め(なまはぞめ)」もありますが、徳島県の藍染めは、阿波藍を原料にして、「発酵建て」という方法で染められます。

◆紬

・大島紬 (鹿児島)

大島紬(おおしまつむぎ)とは、鹿児島県南方の奄美群島の主島である奄美大島の特産品で手で紡いだ絹糸を泥染めしたものを手織りした平織りの絹布、若しくは絹布で縫製した和服である。大島の通称若しくは略称で呼ばれる。



・結城紬 (茨木)

結城紬(ゆうきつむぎ)とは、茨城県・栃木県を主な生産の場とする絹織物。単に結城ともいう。国の重要無形文化財。近現代の技術革新による細かい縞・絣を特色とした最高級品が主流である。元来は堅くて丈夫な織物であったが、絣の精緻化に伴い糸が細くなってきたため、現在は「軽くて柔らかい」と形容されることが多い。奈良時代から続く高級織物で結城市・小山市などで作られている[1]。絹のきらびやかさを抑えた、渋みのある味わいと、嵩高な生地のぬくもりが特徴で、全工程が手作業で作られるため、非常に高価な織物となっている。

・牛首紬(白山紬)

主に石川県白山市白峰地区(旧白峰村)において生産される紬織物。釘を抜けるほど丈夫なことから釘抜紬(くぎぬきつむぎ)とも称される。
絹糸の原料であるカイコの繭は、通常一頭のカイコが作るものだが、まれに二頭のカイコが入っているものがあり、これを『玉繭(たままゆ)』という。玉繭は二頭の糸が内部で複雑に絡み合っているため製糸は難しく、普通はいったん真綿にしてから糸にするが、白峰の人々は先祖伝来の技でこの繭から直接糸をつむぎよこ糸とし、通常の絹糸をたて糸として織り上げる。これが牛首紬である。

・塩沢紬(新潟)

たて糸に生糸・玉糸を、よこ糸に真綿手紡糸を使用し、手括り・手摺り込みによる絣糸を1本1本合わせて織り上げた極細の十字絣・亀甲絣等の絣模様は独特の上品さと落ち着きを醸し出しています。

・小千谷紬(新潟)

「緯総絣」(よこそうがすり)で織られる絣(かすり)や縞(しま)などの模様の他、無地や白紬が作られています。小千谷紬の特徴は、真綿の手紡ぎ糸のふっくらと軽くて温かみがある風合いや、絹の光沢となめらかな手触り、素朴な味わいです。着べりがしないため、気軽な外出着などとして用いられています。

・黄八丈(東京)

八丈島に伝わる草木染めの絹織物。 島に自生する植物の煮汁で黄色、鳶色、黒に染められた糸を平織りまたは綾織りに織り、縞模様や格子模様を作ったもの。 まれに無地の物も染められることがあるが、地の黄色がムラになりやすく市場にはほとんど出回らない。

・紅花紬(山形)

紅花紬は、山形県米沢市で織おられる紬です。紅花紬には、紅くれない系の色を中心に黄色・オレンジ色などの縞柄しまがらや格子柄こうしがらなどがあり、渋しぶい色柄が多い紬の中では優やさしく華はなやかです。紅花から染められた糸が太陽光線に触れて、はじめて淡あわく柔やわらかいピンクに発色します。

・久米島紬(沖縄)

久米島(沖縄県島尻郡久米島町)で織られる紬のこと。2004年(平成16年)、製作技術が重要無形文化財に指定された。久米島紬は、その技術が琉球王国時代以来の伝統を保ち、製法は手作業によっている。また模様選定、染付け(草木染めと泥染め)、織りの工程を一人で行う(一部の工程では分業も行われる)。原料の糸の一部は島内の養蚕農家によって生産され、染料は全て島内自生のサルトリイバラ(グール)などを使い、泥染めなども島内で行っている。

・読谷山花織(沖縄)

読谷山花織・読谷山ミンサーは、紋(もん)織物の一種です。読谷山花織は絹糸や綿糸で、染料は福木(ふくぎ)、車輪梅(しゃりんばい)、琉球藍などの植物染料を主に用いています。模様を表すのに花綜絖(はなそうこう)を用いる「経浮(たてうき)花織」「緯浮(よこうき)花織」と「手(てぃ)花織」があります。経浮花織・経浮花織は布幅の経糸方向又は緯糸方向に色糸を用いて模様を織ります。

◆上布

・十日町明石ちぢみ(新潟)

強撚糸の緯糸にあります。八丁撚糸機により、27デニール(大正時代の「十日町明石ちぢみ」は14デニールを使用していました)の糸に1mあたり約4,000回の撚りをかけています。強撚糸なので、かすかな不純物が混ざっているだけで、まっすぐな時にはわからないような汚れや不純物が短くなり、濃くなります。

・越後上布(小千谷縮)(新潟)

越後上布の歴史は古く、天平勝宝年間建立の奈良東大寺正倉院に「宝物」として今も保存されている。このことからも、1200年以前より塩沢地方において生産されていた事が容易に推察できる。江戸時代(天保年間)塩沢の先覚者、鈴木牧之の著した「北越雪譜」の中に、雪国の生活と共に越後上布の生産のありさまが詳細に記載されている。現在では原料である苧麻の生産量も極めて少なく又、後継者も老齢化してきており、近い将来には「幻の布」となる事も憂慮されている。

・能登上布(石川)

今からおよそ2000年前に崇神天皇(すじんてんのう)の皇女が現在の中能登町能登部下に滞在した際、この地に機織りを教えたことが始まりと伝えられています。「能登上布」は麻独特の通気性の良さや軽さに加え、サラリとした肌触りがあり、細やかな絣(かすり)模様が特徴です。絣が細かくなるほど仕上がった製品は高価になります。

・近江上布(滋賀)

滋賀県の湖東地域は、室町時代より麻織物を産する地域として知られています。特に江戸時代には、奈良晒や越後縮とならび称されるほどの良質な麻織物「高宮布」の産地としてその地位を築きました。中山道高宮宿は湖東地域で生産された上質な麻布の集積地で、彦根藩は「高宮布」を保護し、将軍家への献上品としました。

・宮古上布(沖縄)

沖縄県宮古島市の宮古島で生産される上布と呼ばれる麻織物の一種である。一反織るのに2ヶ月以上かかる上布の最高級品で、「東の越後、西の宮古」と呼ばれる日本を代表する上布である。1975年に伝統的工芸品の指定を受け、1978年には国の重要無形文化財に指定されている。また、2003年には宮古上布の原料となる苧麻糸の製造技術である「苧麻糸手績み」が国の選定保存技術に選定されている

・喜如嘉の芭蕉布(沖縄)

バショウ科の多年草イトバショウ(Musa liukiuensis)から採取した繊維を使って織られた布(織物)のこと。別名「蕉紗」。
沖縄県および奄美群島の特産品。薄くて軽く、張りのある感触から、汗をかきやすい高温多湿な南西諸島や日本本土の夏においても、肌にまとわりつきにくく、涼感を得られる。このため着物、蚊帳、座布団など多岐にわたって利用される。

・八重山上布(沖縄)

沖縄県八重山列島の石垣島等で生産される上布と呼ばれる麻織物の一種である。1989年に伝統的工芸品に指定されている

◆絣

・久留米絣 (福岡)

久留米絣(くるめかすり)は、福岡県久留米市および周辺の旧久留米藩地域で製造されている絣。綿織物で、藍染めが主体[1]。あらかじめ藍と白に染め分けた糸(絣糸)を用いて製織し、文様を表す。伊予絣、備後絣とともに日本三大絣の一つともされる。久留米絣の技法は1956年に重要無形文化財に指定され、1976年には通商産業大臣により伝統工芸品に指定されている。

・琉球絣(沖縄)

琉球かすりの多くには「イチチマルグムー」や「トゥイグワー」など、琉球独自の図柄が織りこまれています。図案通りに織れるよう計算して、糸の部分部分を色分けして先に染めておいたうえで、タテ・ヨコの糸を織り上げます。糸の染め方・織り方の加減によって、図柄のエッジがわずかにかすれたようになることから「かすり」と呼ばれます。手織りならではの微妙な味わいのある模様や色彩が浮かび上がるところが「かすり」の魅力となっています。織り上がった布を後から染める「後染織物」とは違う点です。

・弓浜絣(鳥取)

鳥取県の弓ヶ浜半島(米子市、境港市)で製造されている絣。単に浜絣とも呼ばれる。絵絣で有名で、倉吉絣、広瀬絣とともに山陰の三絵絣の一つとされる。1975年に国の伝統工芸品に、1978年に県指定無形文化財に指定された。

・伊予絣(愛媛)

愛媛県松山市で製造されている絣。松山絣とも呼ばれる。久留米絣、備後絣とともに日本三大絣の一つともされる。江戸時代の後期に、今出(いまづ、現在の松山市西垣生町付近)の鍵谷カナが独力で織出した[1]。当時、農家の婦女子が副収入を目的とし、農作業の合間を見て紡いだものであった。その後明治に入ると織機の改良も進んで生産量も増えて全国的に人気が高まった。明治の中頃から大正にかけては日本の絣生産のおおよそ半分を占め、1904年(明治37年)には生産量日本一(年間200万反以上)を記録した。